儲かるとは思っていない株を買った——「応援する投資」に自分で線を引いた話

夜空を上昇するロケットのシルエット。手前に三日月、遥か上に小さな赤い惑星が見える 投資

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儲かるとは思っていない株を買いました。

たぶん10倍にはならない。売上に対する株価の倍率を見ると、素直に「高い」と思う。それでも買った。増やすためじゃなくて、応援するために。

投資の記事としては、たぶん一番かっこ悪い動機です。でも自分の中では筋が通っているので、その線の引き方を書いておきます。

エンジニアとして、あの人が気になって仕方ない

イーロン・マスクの話です。

正直に言うと、かなりぶっ飛んだ人だと思っています。Xでの発信は過激だし、政治にも深く踏み込んで、周りをかなり振り回してきた。賛否が割れるのも当然だと思う。この話を職場でしても、たぶん共感されない。

それでも僕は、あの人を追いかけてしまう。

エンジニアだからだと思います。電気自動車を成立させて、ロケットを再着陸させて、地球の裏側までネットを届けて、その次に火星と言っている。普通、どれか一個で人生が終わる。 それを並列でやっている人が、いま実在している。

これ、すげーと思うんですよね。

技術の世界にいると、「理屈の上では可能」と「実際に動くもの」の間にどれだけ距離があるか、嫌というほど分かります。仕様書の上ではきれいに書けても、現場では想定外がいくらでも出る。それを何度も乗り越えて実物にしてしまう人が、人類には何人か必要なんじゃないか。そう思っています。

買いたかったのに、買えなかった

その会社が、今年の6月に上場しました。

ティッカーはSPCX。公開価格135ドル、調達額はおよそ750億ドル、評価額は1.75兆ドル規模。史上最大のIPOです(Motley Fool)。

僕は上場前から、通信衛星の事業の伸びに期待していました。実際に数字も出ていて、2025年の衛星通信の売上は114億ドル。全社売上の6割を占めていて、前年から5割増えている。契約者も2026年3月末で1,030万を超えました(同社S-1および各種報道)。宇宙開発が「夢」から「事業」に変わった瞬間を見ている感覚がありました。

で、買えなかった。

IPOの配分なんて個人には回ってこない。上場後は一時225ドルまで買われて、指をくわえて見ているうちに終わっていました。あの時期、正直けっこう悔しかったです。

冷静に見ると、たぶん割高だと思う

ただ、熱が少し引いてから数字を並べ直しました。

今の株価は、2026年の売上予想に対しておよそ38倍。時価総額は1.4兆ドル規模です。この倍率は、まだ利益が出ていない事業や、これから商業化する事業がぜんぶ成功する前提で織り込まれている水準だと思っています。

だから僕の結論はこうです。この株が今から10倍になるとは思っていない。

好きな会社に対してこう書くのは、書いていてあまり気分が良くない。でも、好きだから数字を甘く見る、をやり始めたら投資じゃなくなる。そこは分けたい。

実際、上場後の株価は公開価格の135ドルを割り込んで、100ドル台前半まで調整しました。人気で買われた分が、そのまま剥がれた形です。

だから「増やす枠」ではなく「応援する枠」にした

普通ならここで見送ります。割高だと思っているんだから。

でも僕は、調整して株価が下がったタイミングで少しだけ買いました。増やすための投資ではなく、応援するための投資として。

理屈はこうです。僕が投資でやっている新高値ブレイクや逆張りは、どちらも「増やす」ための手法で、そこには入る条件も出る条件もある。ルールを外れたら切る。感情を挟まない。それはそれで維持します。

一方で、応援したい対象に少しだけお金を置いておきたい、という気持ちも本物なんですよね。ロケットが飛ぶたびに配信を見て、着陸に成功すると声が出るくらいには好きなので。

その気持ちを「増やす枠」に混ぜると、両方が壊れます。好きだから損切りできない、が一番まずい。 だから最初から別の枠として切り離しました。

火星は、延期された

ここからは、書くかどうか少し迷った話です。

僕がこの会社を追いかける理由の中心は、ずっと「次は火星に行く」でした。ところが調べ直したら、その前提は本人によって後ろ倒しされていました。

2026年2月、マスクは当初予定していた2026年の無人火星ミッションを約5〜7年延期し、まず月面都市の建設に注力すると発表しています(Business Insider Japan)。直近の目標は2027年3月を狙う月面の無人着陸で、そこから段階的に火星へ向かう形に変わった。

さらに、主力ロケットは2026年6月時点で飛行停止中です。新型エンジンの複数同時失敗の原因究明が、次の計画の前提になっている(ニューズウィーク日本版)。マスク自身も、無人の火星着陸は2030〜2031年頃、有人は2033〜2035年頃という言い方に軌道修正しています。

つまり、僕が応援していた「2026年に火星」は、もう存在しない。

正直、これを読んだときは少ししんどかったです。それでも見方は変わりませんでした。むしろ、期限に間に合わないと分かった時点できちんと言い直して、月から積み上げる順番に組み替えた——技術屋としては、その判断のほうが信用できる。

できると言い続けて黙って遅れるより、遅れると言って設計を組み替えるほうが、実物は前に進みます。仕事でも同じなので。

応援枠に、自分で引いた3つの線

とはいえ、「応援だから何でもあり」にすると家計が壊れます。だから枠の作り方だけは決めました。

  • 主力の資金とは混ぜない。 増やす枠のルールを緩める言い訳にしない
  • 金額は「ゼロになっても生活も投資計画も揺るがない額」まで。 ここを超えたら応援ではなく賭けになる
  • 上がる理由を後から探さない。 好きだから買った、で止めておく。分析を持ち出すとルールが濁る

3つ目が地味に効きます。人は買った後、その判断を正当化する材料を集め始めるので。応援枠は「正当化しない枠」と決めておくと、増やす枠のほうの判断がきれいなままでいられます。

なお、この枠に損切りルールを当てるべきかどうかは、まだ答えが出ていません。応援なら下がっても持ち続けるのが筋な気もするし、青天井に損を抱えるのは僕のルールに反する気もする。今のところは一応ラインを置いていますが、たぶん半年後には考えが変わっていると思います。

損切りを仕組みで置く話そのものは損切りを逆指値で「仕組み」にする方法に書きました。逆指値が現物で使えるか、有効期限をどこまで伸ばせるかは口座で差が出るところなので、僕はその観点で選んでいます(松井証券の口座開設はこちら(公式サイト)/PR)。

儲からなくてもいい投資が、ひとつくらいあってもいい

まとめっぽいことを書くのは苦手なので、正直なところだけ。

この株で資産が増えるとは思っていません。上がったら嬉しいし、そうならなくても、僕は月面基地の建設が始まるところを株主として見たい。それだけです。

投資の大部分は、感情を排して数字で回すべきだと思っています。実際そうしている。でも全部をそうしてしまうと、なんのために種銭を作っているのか分からなくなる時がある。

だから、ポートフォリオの片隅に一枠だけ、こういうのがあってもいいことにしました。

あなたなら、どの挑戦にその一枠を置きますか。

「増やす枠」のほうの検証は、note で記録しています

手法のルールをAIエージェントにどう実装したか、毎朝どの数字を見て、どのトレードで何を間違えたか。手順と全データはnoteに置いていく予定です。ブログでは考え方まで、noteでは実物まで。

noteの実践記録はこちら

本記事は筆者個人の投資記録であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。記載の株価・業績は執筆時点の公開情報に基づくもので、将来の成果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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