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今月の半ば、注文種別を取り違えて約18万円を失いました。逆指値で出すつもりだった注文を、指値で出していた。発注ボタンを押す前に画面をもう一度見れば気づけた、それだけのミスです。
以来、注文の置き方にはかなり神経を使ってきました。買ったその日のうちに逆指値を入れる。ラインは切り上げても、切り下げない。このあたりは損切りを逆指値で「仕組み」にする話に書いたとおりです。
前提として、僕が回しているのは新高値ブレイク投資法のルールです。
なのに先日、自分の売買ルールを過去5年分の株価データで機械的に回してみたら、こんな1件が出てきました。
取得比-8%に逆指値を置いていたのに、-12.6%で約定している。
注文は正しく置かれています。それでも損失は想定の1.5倍になった。原因は窓(ギャップ)です。
これ、地味にきつい発見でした。僕はずっと「注文をきちんと置けば、損失の大きさは自分でコントロールできる」と思っていたので。
逆指値は「そこに達したら成行を出す」という予約でしかない
まず仕組みの確認から。逆指値は「指定した価格に達したら、売り注文を出す」という予約です。ここで見落としがちなのは、達したあとに出るのが成行注文だということ。
指値ではありません。「-8%のラインに達したら、そのとき出せる値段で売る」という約束です。
だから、ザラ場でじりじり下げてラインを通過した場合は、だいたい想定に近い価格で約定します。問題は、ラインを「通過せずに飛び越えた」ときです。
前日の終値が-3%の位置にあったとして、翌朝の寄り付きが-12%で始まったら。逆指値は寄り付きの瞬間に発動し、その-12%の寄値で成行が執行されます。-8%のラインは、価格が一度も通らなかった。
制御の仕事で言えば、逆指値はインターロックに近い。ある値を超えたら止める、という仕掛けです。ただしインターロックは「値を通過したこと」を検知して動くので、通過せずに飛び越えられたら、何も起きない。逆指値が窓に弱いのは、運や証券会社の問題ではなく、注文の仕様そのものです。
逆指値のデメリットとして挙がるものはいくつかありますが、実害が出るのはたいていここです。損切りが想定より大きくなる原因の多くは、ラインの置き方ではなく、ラインが飛び越えられたことのほうにある。
前提として、逆指値が置けない環境で兼業投資をするのはしんどいと思っています。日中は仕事をしていて相場を見られないので。逆指値自体は今のネット証券ならだいたい標準で使えて、老舗だと松井証券なども対応しています(PR)。
ただ、対応しているかどうかより大事なのは、自分の口座の注文画面で、どこをどう押すと注文種別が切り替わるのかを一度確認しておくことです。僕が18万円払って学んだのは、機能の有無ではなくそっちでした。
検証で出た1件 — -8%のラインが、-12.6%になった
数字の出所を書いておきます。
自分の売買ルール(新高値からの押し目を待って入る型)を、過去5年分の株価データに当てて機械的に売買させるシミュレーションを回しました。資金300万円、1銘柄あたり50万円、同時に持てるのは5銘柄まで。損切りは取得比-8%を上限に逆指値、約定は翌営業日の始値、手数料と税金も引く。実弾に近い条件で組んだつもりです。
このシミュレーションで発生した98トレードのうち、最も大きな1敗が、この-12.6%でした。
内訳はこうです。-8%に置いた逆指値の位置まで、株価はザラ場で降りてこなかった。翌日の寄り付きがすでにそれより下にあり、そこで成行が刺さった。逆指値は仕様どおりに動いています。動いた結果が-12.6%だっただけで。
銘柄名は書きません(特定の会社の値動きを解説する記事にしたくないので)。大事なのはどの銘柄かではなく、同じことがどの銘柄でも起きうるということなので。
-10%という上限も、窓の前では成立しない
僕は損切りを二段構えにしています。第一の撤退基準が取得比-7〜8%かテクニカルな節目の浅いほう。そしてもう一段、取得単価-10%を自分に課した上限として置いていて、第一基準で切れなかった場合もここで無条件に降りる、という決め方をしていました。
この-10%には根拠があります。損失の回復に必要なリターンは、下落率に対して直線では増えないからです。
| 下落率 | 元に戻すのに必要な上昇率 |
|---|---|
| -5% | +5.3% |
| -10% | +11.1% |
| -12.6% | +14.4% |
| -20% | +25.0% |
| -30% | +42.9% |
| -50% | +100.0% |
-10%までなら+11.1%。次の1回がうまくいけば取り返せる範囲です。-20%を超えると+25%必要になって、「1回の成功で戻す」が現実的でなくなる。-50%まで行くと株価が2倍にならないと元に戻らない。だから-10%を線にしていました。
でも今回の検証で、その-10%が窓では守られないことが数字で出てしまった。
損切りラインは、僕が置いた目標であって、市場が守ってくれる約束ではない。
分かっていたつもりでした。前の記事でも「窓を開けて暴落した場合は指定価格で約定するとは限らない」と一行だけ書いています。でも一行で済ませていた。実際に-8%が-12.6%になった数字を見るまで、僕はこれを「まれな例外」として扱っていました。98件中の1件は、確かにまれです。ただ、その1件が最大の損失を作っている。
ストップ安なら、そもそも約定しないこともある
窓のもう一つの顔がこれです。
「逆指値を置いていたのに約定しなかった」という話は、たいていストップ安に張り付いたケースです。逆指値が発動して成行の売り注文が出ても、買い手がいなければ約定しません。売り注文だけが板に積み上がり、翌日も同じことが起きる。
これは注文の問題ですらなく、市場に相手がいないという話なので、注文種別を工夫しても解けません。損切りの設計を考えるときは、「約定価格が想定より悪くなる」と「そもそも当日中に降りられない」の両方を、起こりうるものとして数えておいたほうがいい。
対処は注文の工夫ではなく、1銘柄にいくら入れるか
じゃあどうするか。
僕がしばらく考えて出した答えは、注文の側では解決しない、でした。IFD系の注文を組み合わせても、逆指値を二重に置いても、値が飛ぶ現象そのものは止められないので。
逆指値そのものが現物で使えるか、有効期限をどこまで伸ばせるかは口座によって差があります。この観点で口座を選んだ話は新高値ブレイク投資を始める証券口座の選び方に書きました。
効くのは1銘柄あたりの投入額を抑えること、これだけです。
数字で見ると分かりやすい。資金300万円のうち1銘柄に50万円を入れているなら、その銘柄が-12.6%になっても、資産全体で見れば-2.1%です。同じ-12.6%でも、300万円を1銘柄に集中させていたら、そのまま資産が-12.6%減る。
窓の大きさは選べません。何%になるかは自分では決められない。決められるのは、その%が資産全体の何%に翻訳されるかの倍率のほうです。
言い換えると、こういう順番になります。
- 損切りラインは「1回の負けをいくらで止めたいか」を決めるもの
- ポジションサイズは「そのラインが破られたときに、どこまで被害が広がるか」を決めるもの
- ラインだけを設計してサイズを設計しないと、破られた瞬間に全部が想定外になる
僕はこれまで、ラインの置き方ばかり細かく検証していました。何%が最適か、押し安値か25日線か。今回のシミュレーションでは損切りの置き方を2通り比べてみたのですが、最終的な資産の差は12万円ほどで、標本のばらつきと区別がつきませんでした。一方でポジションサイズは、掛け算でそのまま効く。優先順位を逆に持っていたな、と思っています。
決算をまたぐのは、窓リスクを自分から取りに行く行為
窓が開く理由の大半は、取引時間外に出た情報です。悪材料、地合いの急変、そして決算。
このうち決算だけは、いつ来るかが事前に分かっています。分かっているのにまたぐということは、「-10%で止まらない可能性のある夜」を自分で選んで通過している、ということになります。
またぐのが悪い、という話ではありません。またいで上に飛ぶことも同じ確率であるので。ただ、またぐなら「今夜は逆指値が効かないかもしれない」を織り込んだサイズにしておく。またがないなら決算前に降りる。どちらかを事前に決めておく、というのが今の僕の運用です。
決算前夜に「どうしようかな」と考え始めた時点で、それはもうルールではなく気分になっているので。
この数字の限界(正直に書いておきます)
なお、実運用の側の数字は決済84トレードの全成績で全件公開しています。今回のシミュレーションはそれとは別物です。
ここまで検証の数字を根拠に書いてきたので、その数字がどれくらい信用できるかも書いておきます。
- 過去5年のデータに対して、いくつもの設定を試した後に選んだ結果です。都合のいい設定を後から選んでいる分、実際より良く出ている疑いがあります
- 母集団に、この5年で上場廃止になった企業が入っていません
- 約定価格のズレ(スリッページ)を見ていません
つまり、この検証の数字そのものは将来の成績を予測しません。持ち帰る価値があるのは金額や%ではなく、「逆指値は窓を通り抜けられる」という構造の部分だけです。むしろ、上に挙げた限界のせいで実際はもう少し悪く出るはず、と考えています。
まとめ
- 逆指値は「その価格に達したら成行を出す」注文。寄り付きがラインより下なら、その安い寄値で約定する
- だから損切りラインは目標であって、保証ではない。-8%が-12.6%になった実例が、僕自身の検証から出てきた
- 対処は注文の工夫では効かない。1銘柄あたりの投入額を抑えることだけが、窓の被害を割り算で小さくする
僕は「注文を正しく置けば損失は設計できる」と思っていました。半分は合っていて、半分は間違っていた。設計できるのは「通常の下げ方をしたときの損失」で、飛ばれたときの分は設計の外にあった。
それが分かってから、損切りラインの微調整に使っていた時間を、1銘柄にいくら入れるかを考える時間に振り替えました。たぶん、こっちのほうが効きます。今のところは。
本記事は筆者個人の投資手法の記録であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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検証の中身をもう少し詳しく
この記事は考え方の部分までです。僕は保有銘柄の損切りラインを毎朝チェックする作業を自分の手から外して、機械に監視させています。その仕組みの中身と、「売買だけは機械に触らせない」と決めた線の引き方は、noteにまとめました。


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